ひれふする大地


フリークライミングにハマった私に大きく影響されたのはインゴとミシェル。
共同で用具一式を購入した。

だから週末になれば一日中チョーロで岩壁にしがみ付いている。

じかに触れてるから色々なコトに気づく。
例えば岩の体温(?)
明け方はヒンヤリ、真昼間はジリジリ熱い。夕方にピタッと体を岩肌にくっ付ければ、
表面は冷たいのに、奥の方からポカポカした温かさが伝わってくる。
岩肌はすべすべであったり、ゴツゴツしてたり、サメ肌を通り越して剃刀のようだったり。

自然が発する様々な音に気づく。
日光が地上に振り落ちる音、岩肌が焼ける音、岩壁の、大地の呼吸する音。

フリークライミングは、そこにある自然そのままの岩壁を、自身の体だけを使ってヨジ登る。
決められた道も、登り方も存在しない。
かと言って自分の力だけで登れるハズもなく、岩壁が与えてくれる手がかり足がかりを頼りに、
つまりは自分と自然との共同作業で成し遂げるモノなのだ。

小さな窪みや、岩の割れ目、ちょっとした膨らみ、靴の滑らないザラザラした場所。
そんな自然が与えてくれるヒントをどう調理して、
手足をどのように配置するのかは自分自身が考えなければならない。

自然とのしっかりしたコミニケ〜ションを怠ると、
全体重をかけた途端に、その手・足掛かりが無常にも脆く崩れ落ちてしまったりするのだから
一歩一歩岩壁とコミニケーションを取りながら、丁寧に確かめ確かめ登っていく。


上まで登りきったら、後ろを大きく振り返る。
遠くの方にキラキラ輝く地中海が見える。
そして銀色の葉を優しく揺らすオリーブの木が、
黄金に輝く力強い大地が、
私の下に広がっている。
私の下でひれふしている。


何だか世界を征服したような、なんとも爽快な気分になる。





カフェオレと私


フリークライミングは自らの手を使って岩を登るスポーツである。
そんな訳で週末にフリークライミングをした次ぎの日の朝は、
か弱い私の手の指の皮は薄くなりヒリヒリと傷む。
そんな朝はミシェルが作ってくれる熱々のカフェオレに 何だか偉くとっても苦労する。
指先がシミて痛くて熱いカップを持てないからだ。

だから私はカフェオレカップをタオルで包みこんで飲む。
あるいは机に置いて犬飲み...
そんな私に優しいソフィーはオーブン料理の時にはめるミトンを買ってきてくれた。
ちょっとカッコ悪い気がうっすらとしないコトも無くはナイけど、
こりゃ、ナカナカいけてるんじゃないの? なんて御満悦に浸っていた私。

しかしそんな私を見かねたインゴがドイツからわざわざ取り寄せてくれたのは、
デップリとして分厚い蓋付きのビールジョッキ。

それ以来、毎朝ビールジョッキでカフェオレを飲む私を見る度に
カフェオレ形式美に対するオタク的美的センスが許さないのか、
眉間に皺が寄ってしまうミシェルなのであった。

でもコカ・コーラを飲まれるよりは全然ずっとマシらしい。



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