スペインの大地は私を魅了する



何処の町にも必ずあるモノ。

町の中心となる広場、町のシンボルとなる教会、町を取り囲む城壁。

特に私の住むアンダルシア地方は、レコンキスタの最終戦線として
キリスト教徒とイスラム教徒が長く激しい戦いを繰り広げていたお土地柄ゆえに、
どんなに辺鄙な村だって何ともご立派な城壁をもっていたりするのだ。

そんな中でも私の一番のお気に入りはロンダの城壁。
夕暮れ近くなると、私は何時もオレンジとミネラルウォーターを持ってこの城壁にやってくる。

崩れかけた見張り台の階段を攀じ登り、
1M幅の城壁の上を歩く。
落ちたら例外無く死んでしまう高さだから、
風の強い日は要注意。

お気に入りの場所に辿り付いたら、大きくノビをしてからソコに座り込む。
目の前にはドーンと大パノラマが広がっている。
乾いて赤茶けた大地が広がっている。
大地の上のもじょもじょとして見えるのは羊の群だ。

大地から吹いてくる、乾いた風の心地よさを感じながら
大地から届けられる、熱い匂いを感じながら
私はオレンジを齧る。
甘酸っぱい香りが瞬間私を包み込む。

日本を飛び出してから、2年の月日が過ぎようとしている。
私が設定したタイムリミット「4年生の大学を卒業して社会人」となれるギリギリのラインだ。
今帰ればマダ間に合う。

社会人になる前のちょっとした寄り道。
そんな理由が許さる、と勝手に自分で思っている期間が2年間。
マダ間に合う。マダ間に合う。
何度もそう呟いてみる。

ああ、しかし何だかとっても中途半端だ。
寄り道にしては長過ぎるし、
何かを得るには短過ぎる。

何もかもが中途半端だ。
日本へ帰るにしても、スペインに残るにしても。

今、私は、スペインに居る。
それは、正しいコトなのか、間違ったコトなのか。
無駄なコトなのか、価値あるコトなのか。
遠回りしているのか、近道しているのか。
進んでいるのか、後ずさりしているのか。
楽な方に逃げているのか、何かに立ち向かっているのか。

誰が決めるのだろう?
私が決めるのか?
そうだよな。

結局何も変わらない。
私は相変らず答えを持たない。
何かを見つけられると思っていた。
その「何か」が何かも分からないまま。


子供の時に書かされた作文を思い出す。
「大きくなったら何になりたい?」

確か「大きくなったら新幹線になりたい」って書いたんだよな。
新幹線の運転手じゃなくて新幹線に...

大きくなったら、大きくなったら。
そして私は20歳を超えた。
私は大きくなった。

大きくなったら何になった?
少なくとも新幹線にはなれなかった。

で、何になった?


何もかもに興味を持って、
何もかもにも手を出して、
何もかもにも厭きてしまって、
何もかもが中途半端で終わった。

結局、何も無い。
なんにもなんにも無い。

何かを始めるベキなのだ。
でも何を?
焦って、焦って、不安になる。
何を始めたらイイのか分からない。

もう20年生きた。
あと60年位生きるんだろうな。
何をして生きるんだろう?
何の為に生きるんだろう?

帰るのか。帰らないのか。
何故帰るのか。何故帰らないのか。
日本で何をするのか。
スペインで何をするのか。

う〜っっっっ!!!!!!
思考放棄して顔を上げる。
スペインの大地が飛び込んでくる。
スペインの大地が私を吸い込んでいく。

夕日に照らされて、大地は黄金に輝いている。
何だか涙が溢れてきた。
でも悲しいからじゃない。
良くワカラナイ涙だ。
しかも 止まらないっっっ!!!

そんな私を、
大地は優しく包み込む。
すっぽりと包み込む。

「それでも....、スペインの大地は私を魅了する。」
何時もココに来ると思い出す言葉だ。
スペインの詩人マチャードの詩の一部だったっけかな?

今、私が分かる唯一の事。

スペインの大地は私を完全に魅了している。




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