運命を変える出会い


ある週末、私達は何時もの如くチョーロに居た。
目の前には魅惑的な湖...
しかし余りの暑さに、クラクラ眩暈と吐き気までする。
そんな訳で私達は、湖の傍らの木陰にマットをひいて、
ただただひたすらにぐ〜たらしていた。

スペインは本当に暑い国だ。

それはもう信じられないくらい熱いのだ。
ナイフで刺されるような強い日差し...
ぬわんて生易しいモンじゃなく、
斧でガツガツ叩きつけられるような痛さ。

そう言えば誰かが、スペインではマンホールの上で目玉焼きが焼けるんだぜ、なんて言ってたよな。
冗談だと思ってケラケラ笑ってたけれど、
笑うべきモノではなかったのだ。
...
なんてこった。

脳天気は気温と精密に比例しているのだ。
人間の性格はきっと気候で決まるのだ。
ドイツは薄ら寒く、空には何時でも重たい雲が垂れ込めていた。
あんな空の下では私ですら眉間にシワを寄せて、
ちょっくらコムズカシイ話でも...なんて衝動にかられたりもする。
だから、きっと、絶対、ロシア人に脳天気なんて居ないのだ。(←完全な独断と偏見)

シエスタ(お昼寝)は何だか怠慢の象徴みたいに思われてるフシがあるけれど、
ここまで暑いと何もする気になれない、ってか何も出来ない。
日本人の感覚で、シエスタ=お昼寝と考えるから怠惰に思えるんだろうな。
きっと時間が勿体無いように感じるのだろう。
けれどもスペインは夜の10時頃まで殆ど全く昼間な明るさなのだ。
お昼に2〜3時間眠ったトコロで、まだまだ充分にリカバリー出来る一日が残されている。

更にスペインは、日が暮れてからがとぉ〜ても長いのだ。
夜の11時にクラブやBARに行っても閑散として誰も居ない。
何処からともなく人がワラワラ涌き出てくるのは夜中の1時を過ぎた辺りだ。
こりゃどう考えてもシエスタが得策なのである。

ま、そんなコトはイイとして、そろそろ日差しが柔らかくなる5時あたり、
やっとこさ重い腰をあげ私は一人お散歩ぶらぶらにでかけた。

フと見上げると、岩肌に人が沢山しがみ付いていた。
チョーロはロッククライミングのメッカなのだ。
それまで私のイメージするロッククライミングは
筋肉モリモリの、ファイトー! 一発っっ!!
であったので大和撫子な私には全く無縁のモノとばかり思っていた。
が、しかし、随分とスリムな婦女子が沢山ぶら下がっているではナイかっっ!!!
しかもヘソ出しのタンクトップにショートスパッツ。
何だかヤケにカッコイイ(はぁと)。

暫くぼーっと眺めていた私、ドウにもコウにもやってみたくなった。
とりあえずスペイン語で話しかけてみる。
南部で覚えた私のスペイン語は、実はナニゲに訛っていたりする。
ここアンダルシア地方ではSを発音しない為、何やらホニャらホニャらしたスペイン語となる。
更に私は日本語だって何やらホニャラほにゃらしているのだ。
「ね〜ね〜、それオモシロそ〜やけん、仲間に入れちょぉ〜なぁ」
ニュアンス的にはこんなモンだろうか??

しかしスペイン語が通じなかったので、私の驚きのドイツ語を使ってみた。
私はDUに対する動詞の不規則活用がメンドクサクて、
3回以上指摘されない限り誰に対しても敬称のSIEで喋る裏ワザ活用者である。
「貴殿が携わっているフリークライミングなるモノを拙者も共に共有したい」
ニュアンス的にはこんな感じ?

ドイツ語も通じなかったので、いよいよ私の摩訶不思議英語のお出ましである。
「YOU達と一緒にエンジョイ、イェーィでレッツゴ〜♪」
多分こんな感じだと思う...(恥)。

でも通じた。語学なんて通じればイイのだ。そうなのだ。うん。
どうやらフランス人の集まりらしい。

ワラワラと私の周りに群がって、とっても親切に何だか色々と教えてくれるのだが、
何を言ってるのか全く分からない...。
フランス語ってぇのは、やっぱり粘りっこぉね、なんて思いながら、
「OK!No ぷろぶれむっっ」を連発するチャレンジャーな私。

結論として、
色々なトコロをぶつけて痣傷だらけにはなったけれどめちゃくちゃに面白かったっっっ。

それからすっかりハマってしまった。ヤミツキになった!!!

更にはフリークライミングを通して、実に多くの友人を得る事が出来た。
私のスペイン生活を楽しく優しく彩ってくれる仲間達に出会えた。
私にとって、フリークライミングとは、
その後のスペイン生活を決定的に変える運命の出会いだったのだ。
...ちと大袈裟か?



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