ドイツの日々どんよりな空の下で 私のどんより指数も日々増加していった。 そんな気持ちを察してくれたのか、タイミング良く夏のバカンスが始まったからなのか、 朝目覚めると家の前でインゴが車をアイドリングしていた。 「リミットは2週間と4日、さてさて何処に行きたい?」 私は即答した。 「南へ行きたいっっっ!!!」 私達は手当たり次第に色々なモノを車に投げ込んだ。 トランクには本をタンマリと積め込んで、リュックにはスケッチブックと色鉛筆。 この日記を書き溜めているワープロとバッテリーは盗まれないように車の座席の下に。 南へ、とにかく南へ。 ドイツの快適なアウトバーンに乗っかって、 鬱蒼とした空から逃げ出すかのように 車は順調に夏へと近づいていく。 道路の向こうにエメラルドに輝く海が見えた。 車を止めてジーンズのまま海に飛び込む。 私達はスペインに辿り付いたのだ。 これが地中海かぁ〜〜。 ご満悦モード全開で、海にぷかぷか浮かんで空を見上げる。 雲一つ無い、気味が悪い程に青い空が広がっている。 しかしヤケに簡単な空だ。色に全くヒネリが無い。 絵の具のチューブから直にそのまま画用紙に厚塗りしたかのような 混じりっけナシの単純な青。 こんな空を眺めていると何だかイロイロ悩んでいたのが馬鹿らしくなってくる。 あぁ、本当に拍子抜けしてしまう。 やっと海から上がった私達は、びしょ濡れのまま食料の買い出しに街まで出た。 フと後ろを振り返れば水を含んだ私達の足跡が道路にペタぺタ貼り付いている。 エメラルド色にぴかぴか輝く海まで貼り付いている。 楽園への道標かのように。 私達が向かっているのは、真っ白な消しゴムを連ねたような小さな街。 その街の向こうには、どこまでもどこまでも赤茶けた大地が続いている。 Tシャツは一瞬で乾いた。ジーンズも既に半乾きの状態。 日差しが痛いっっ、なんてモンじゃない。直火で焼かれる感覚だ。 なんなんだ、こりゃ?、おいおい。そんな感じ。(分かる?) アンマリにも露骨すぎる日差しが白壁に反射して眩しくてショウガナイ。 家々の白壁には妖しげな赤紫色の花がしがみ付いている。 街の至る所にある椰子の木。カラフルなパラソルを広げたオープンテラスのカフェ。 何もかもが太陽の攻撃から必死にじっと耐えているかのような感じがする。 何だかとっても痛々しい。 あちぃ〜よ〜。い、痛いよ〜。 ブツブツ文句を言いながら私は歩く。 建物が作り出す陰が、何処までも深い闇を作る。 逃げ込みたい衝動にかられるけど 何だかブラックホールのように吸い込まれてしまいそうで不安だ。 細く曲がりくねった道が、クモの巣のように街中を無秩序に駆け巡る。 突然ブチ当たる袋小路には イスラム様式の可愛らしい小さな噴水がポツンと佇んでいる(←当たり) もしくは犬のモノだか、誰のモノだか良く分からない、何だか大規模な糞が佇んでいる(←ハズレ)。 廃墟となった教会の崩れ落ちた壁のアタリには使用済みの妖しげなモノ達が転がっている。 何故にこんなトコロに落ちているのだ?思わず問いかけたゴム製のモノや、 使用後と推測されるトイレットペーパー、 コカインを焼いたアルミ箔の残骸、 更には乾いた血がこびり付いた薄汚れた注射器...。 な、なんなんだ?この国は?おいおいおい....... 何処からともなく流れてくるのは、♪おっ、こぶしの効いた演歌っっっ♪ なんて思ってたら、隣りでインゴが「フラメンコの調べだ!!」だってさ。 インゴ君すっかり感慨に耽ってるよ。ふん。 コレがフラメンコね。調べ、ね。ま〜インゴ君ったらブルジョアね、博識ね。 ハイハイど〜せ私は..... 一人ブツクサいじける私。 空ろな目をした麻薬中毒らしき若者が炎天下の道端に座り込んでいる。 ベンチに座ってケタタマシクお喋りしているのは、そりゃ、もう、果てしなくデブなオバちゃん。 じっと聞いてるのは全身黒一色で身を固めた老婆。 のんびり杖を突いて歩くベレー帽の老人。 教会の前の階段で物乞いする片足の少女。 毛の抜けたコッキタナイ犬が、キャンキャン吠えながらメス犬と妖しげな行動をしている。 ああ、何だか見るからに馬鹿そうな犬が沢山いる......。 強烈だった。何もかもが強烈だった。 なんなんだなんなんだこの国は???????? おいおいおいおいおい........ |