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その昔、アンダルシア地方は想像以上に貧しい地域だった。
今では観光客を呼び寄せる「立役者」となり得る有難い太陽も、
過酷なまでに深刻な水不足をもたらす「厄介モノ」でしか無かった。
アンダルシアの赤茶けて乾いた大地には何も育たなかった。
険しい岩山の連なりは交通網の発達を妨げた。
人の流れ、モノの流れが遮断されていた。
つまり商業が発展しなかった。
アンダルシアにおいて「街」と「街」の間に「街」は存在しない。
街々は取り残されたかのようにそれぞれ孤立している。
時代から、世界からさえも忘れ去られたかのように。
そんな閉ざされた街の中で、人々は餓死寸前にまで飢えていた。
それを救ったのが皮肉にも独裁者であったフランコ将軍であり、彼が展開した観光開発だった。
アンダルシアの観光地化によって世界中からバカンス客が押し寄せるようになり、
この地域の経済は急激に活性化した。
アンダルシアは観光客が落としていく外貨を頼りに生きるようになった。
しかし最近のEC統合で物価がメキメキと上昇した。
「スペインは安い国」なんてイメージが弱くなってきた。
観光客はもっと安く、そして急激にリゾート化も進んでいるカリブ海方面に目を向け出した。
バスク地方独立に向けての無差別テロ活動は相変わらず激しい。
目と鼻の先にあるアフリカからやって来るモノは、
熱砂や熱風だけに留まらず、
大量の不法出稼ぎ労働者と、それに混じって大量の麻薬が運び込まれた。
言うまでも無く、麻薬は治安を悪化させた。
そして観光客の足は更にスペインから遠ざかっていった。
それでもスペインは相変わらずの観光大国である。
年間スペイン全土の人口の2倍(!)に等しい観光客が訪れる。
しかし観光客の数は年々確実に減少しているし、
余りにも観光地化されすぎてしまったアンダルシア地方を嫌って、
他の地方へと流れる傾向にある。
それなのに観光客だけを頼りに宿泊施設を増強し、リゾ〜ト化を更に推し進め、
その結果、当たり前だけど需要と供給のバランスが崩壊した。
アンダルシア地方は再び深刻な経済危機に陥っているのだ。
この地域の失業率は他のどの地域よりも高い。一説によれば26%だとも言われる。
観光に携わる第三次産業に従属する人の比率が高く、
そして肝心な観光客が極端に減少しているからだ。
問題はマダマダあって、この辺りは貴族による大土地所有の悪慣習が今だに根強く残っている。
小人数の貴族が広大な大地を所有し、
しかし彼らはアンダルシアの痩せた土地には何の興味も抱かず、
年に一度、来るか来ないかの狩猟地として全くホッタラカシにしている。
それがこの辺りの開発を大幅に遅らせている元凶でもあるのだ。
世界中の人々から、「この世の楽園」とまで称されるスペインという国。
しかしその楽園の住民の生活は想像以上に厳しい。
スペインはポルトガルに次ぐ移民国なのだ。
自国では何も得る事が出来ずにフランスやドイツ、
更には南米辺りにまで出稼ぎに出るスペイン人は大変多い。
勿論、その中で一番多いのがアンダルシア地方の人である。
けれども移民した先で成功し、大金を稼いだスペイン人は、
必ず皆自国に戻って来る。
スペイン人は必ずスペインに、
アンダルシア人は必ずアンダルシアへと戻って来る。
そしてこの地を訪れた観光客もまた、
再びこの地を踏みたくなる。
アンダルシアの憂鬱、されどアンダルシア。
例えどんなにココで生きる事が難しくても、
ココが楽園だと言う事実は変わらない。
どんな問題を抱えていても、
誰もがこの土地を愛し、
この大地を誇りに思う。
人を惹きつけて止まない、そんな大きな力が、
この大地には宿っているのだ。
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