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マラガから車、もしくはロンダ行きのローカルな電車に乗って トロトロと1時間程走ったトコロにチョーロはある。 日本では全く知られていないチョーロだけれども、 ヨーロッパではフリークライミングのメッカとして何気に有名であるらしく 結構な賑わいをみせたりする享楽地なのだ。 程良く設備の整ったキャンプ場や 泳ぐには最高な湖まであったりもするもんだから 夏になればキャンプ客の到来で更に賑やかになる。 しかし本当にココは素晴らしい。 いわゆる「風光明媚な場所」ってやつだ。 湖があって、川があって、山があって、クライミングに最適な岩山があって、 小さいながら何でも揃うスーパーがあれば、マイケルジャクソンのかかるディスコだってある。 私達は海まで徒歩10分なんて贅沢なトコロに住んでいるのだけれど、 海は平日に、そりゃ、もう、嫌と言う程満喫出来るので、 週末の殆どをココ、チョーロで過ごしているのだ。 スペインにはグラナダをはじめタダただ歩いているだけで幸せになれる、 趣の在る素敵な街が多いのだけれど、マラガの街はハッキリ言って街自体に魅力が無い。 それでも人を魅了させ、スペインきってのス〜パ〜リゾ〜ト地として華やかな位置を保てるのは、 雨の降らない温暖な気候と、どうしようも無い程に美しい自然のお陰なのだと思う。 そんな訳で私達は何時もの如くそのチョーロに居た。 ミシェルの誕生日を祝う為に、我が家のメンツ全員が集まりスペシャルディナーの準備をしていた。 ソフィーは焚き木を集め、カルロスは彼女とイチャツキながら歌い、 ルカはディナーの下ごしらえをし、インゴは水を汲みにいった。 そして私とミシェルは 村外れの畑に野菜を盗みに行った。。。 何故に私達が? それには深〜い訳があった。 「遠目で見て、見るからに外国人、喋ってみて全くの外国人」 そんなインゴの定義に、最も相応しいのが私とミシェルだったのだ。 つまり、もし誰かに見つかった場合は、トコトン最後の最後まで、 「スペイン語が分からず、何を言われても分からない、 だから何を言われても笑って誤魔化す善良な外国人」 の「振り」を貫き通す戦略らしい。 何で大和撫子の私が??? ミシェルはミシェルで、何で誕生日のオレが??? などとブツクサ文句たれながらも 偉い私達はキチンとつつがなく任務を遂行した。 戦利品を高々とかかげ基地に戻ると 皆がソフィーを囲んで喧々囂々していた。 ソフィーの拾い癖には慣れっこな私達。最近では何を拾ってきてもソウソウ驚かない。 そんな私達も今回はちょいとビックリ、 ソフィーが大事そうに抱えている「灰色のフカフカしたモノ」は、どうやら鷹の雛らしいのだ。 フリークライミングをしていて、よいしょっと手をかけたトコロが偶々鷹の巣で 生まれたての雛を落としてしまった。そんな後悔にかられクライミングを辞めてしまった人を俺は知っている。 (インゴ談) 鷲や鷹は一匹の雛しか育てないから、卵が孵った時点で一匹を残し、 残りの雛は巣から蹴り落してしまうのだ。 (ルカ談) その他イロイロな説があがったが とにかく焚き木を探して森の中を歩いていたソフィーは 偶然にもそんな息絶え絶えな雛を発見し 勿論そのまま拾ってきたのであった。 雛はお腹を空かせているのかピ〜ピ〜うるさく、何か食料を与えて黙らせないと、 さっきから「肉が少ねえっっ」なんてワメイテいるルカに調理されてしまいそうだった。 しかし雛と言えども立派な肉食獣である。大変贅沢なコトに 私とミシェルが額に汗して不正入手した新鮮お野菜を与えても、 イヤイヤとばかりに首を振るだけである。可愛くないやっちゃ。 結局私達のパエリヤ用の肉は、殆ど全てすきっ腹を抱えた醜い雛に食べられてしまったのだった。 家族会議の結果、雛は暫く我が家で飼う事にした。一人では餌を取る事が出来ないからだ。 しかしこの決断は思った以上に大変だった。 チキージョ(ちび)と名付けられた醜い鷹の子は、昼夜問わずお腹がすくとピ〜ピ〜泣き叫ぶ。 スーパーで買った鳥のササミを持って近づくと、その泣き声は更に切羽詰ったモノとなり、 コレ以上どうやったって伸びないギリギリのトコロまで首を伸ばし、 目の色変えて胃袋が見えそうなまでにでっかく口を開く。 ....あぁ、ホントに可愛くない...。 そのパックリ開いた口に、「このままノドを詰まらせてしまえっっっ」 とバカリにササミを突っ込む。 その食べっぷりは凄まじく、そんなこんなでチキージョは見る見る大きくなった。 ある日何時ものチョーロで、カルロスが小さなヘビを捕まえた。 ルカがそれをチキージョの鳥篭に突っ込み、口で戦いのゴングを鳴らすと、 古館風プロレス実況中継を始めた。 ヘビは小さいながらも威嚇の音を出し、チキージョに向かって戦闘体勢を取った。 私とソフィーはチキージョがヘビにアナコンダの如く絞め殺されてしまいそうだったので止めに入った。 しかし最初はちょっとビビってたチキージョも、 突如として野生の本性に目覚めたのかその後の行動は冷静沈着だった。 尖った嘴でブスっとヘビに致命傷を与えると、もがき苦しむヘビをそのまま丸呑みにしてしまったのだ。 その余りにスプラッタな光景を前に、平和なチョーロの青空に私とソフィーの絶叫がこだました。 結局私達は鳥篭にチキージョを入れ、警察の入り口にそっと置き去りにするコトにした。 迷子ということで。 その日からソフィーと私はコトあるごとに涙を流し、 止むを得ず子供を捨てる親の気持ち、とやらをセツセツと感じながら過ごすのであった。 |
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