魅惑の鍾乳洞探検  


ある週末
クライミング仲間の溜まり場となっているBARでビリヤードをしていたら、
17歳の若さも手伝って、愛くるしい性格で誰からも可愛がられているクライミング仲間のホセが
ゼ〜ハ〜言いながら飛び込んできた。

( 以下、超訳 )
「す、凄い話があるんだ。ホントに凄いんだって!!!
オレの友達の弟の従兄弟のミリ(兵役についてる人)が、この前サ〜ラの鍾乳洞で訓練した話だよっっ。
トニカク凄いんだっっっ。
メチャクチャ綺麗で、面白くて、だからトニカク、ホントに凄いんだって。
絶対気に入るって。だって本当に本当に凄いんだからっっっ!!!!」

興奮しきってるホセをナダめ、何だか良く分からないけど、
そのスンゴイ鍾乳洞とやらを見に車を走らせた。
チョ〜ロからロンダに向かって1時間、サ〜ラの小さな村を抜けて30分程行った時、
岩山の連なりに、イキナリぽっかりと大きな穴ぼこが出現した。
お、おぉ〜お〜っっっ♪

こんなモンじゃないんだぜっっっ♪
シタリ顔のホセは車から飛び降り、私達を洞窟の中へと導く。
外は容赦無い夏の日の午後、なのに洞窟の中はヒンヤリとして冷蔵庫のようだ。

湿った妖しげな匂いのする岩と岩の間をちょっぴりビクビクしながら降りていく。
何だかインディ〜ジョ〜ンズのセットみたいだ。
どんどん視界が暗くなる。

突然ホセが振り向き、私達の顔を見回し、ホントに全く得意そうな顔で言う。
ホントにホントに凄いんだぜっっ♪
ああ、少年よ、分かった。凄いってのは充分に分かったから、早くソコをどいて見せておくれっっっ。

ちょっとした崖になっていた。
私達は一列に這いつくばって下を覗きこんだ。
そして一斉に叫んだ。
「す、凄いっっっ!!!!!!!!!!!!」

私達は暫くの間腹を抱えて笑った。
ホセ、で、でかしたっっ!!
ホントに本気で君の言う通りだ。
凄い。凄い。それ以外に無いっっっ!!!
私達は誇らしげにしているホセをバシバシ叩いて賞賛した。

崖の下には大きな泉が、何処までも透明な水を湛えていた。
岩の隙間から無数に差し込む光の帯が空中で交差し、
まるでスポットライトを浴びた舞台のようだ。
水面はキラキラと光り輝いている。
ああ、何だかもう、この世のモノとは思えない幻想的な景色が広がっていたのだ。

この泉の奥に見える洞窟をどんどん進めば、5時間程で岩山を突っ切り、
反対側の滝のある川に辿りつくらしい。
日光が届かない為、洞窟の水はカナリ冷たいらしく、
ウエットス〜ツが必要とのコトなのでその日は諦め、
次ぎの週末に全てを揃えてアタックするコトを即決した。

次ぎの週、鍾乳洞探検に集まったメンツは全部で7人。
私、インゴ、ミシェル、ホセ、クライミング仲間のフアン、ホセの友達の弟アンヘル、
その従兄弟のミリで、この探検の隊長であり道先案内人ともなるハビエル。

街のアウトドア屋さんでウエットス〜ツをレンタルし、ロ〜プやらナニやらの妖しい重装備を身に施して、
ホセの言葉を借りるなら、「トニカク凄い」鍾乳洞探検が始まった。


マズはその泉に蹴り落とされるトコロから冒険は始まった。
今まで支配していた静寂の世界を、木っ端微塵に打ち破る私の雄叫び。

水はキ〜ンとする冷たさ。でもウエットス〜ツを着ているからへっちゃら。
泉は濃い藍色で、随分と深いらしく底は見えない。
何だか下の方で得体の知れないモノがじっと身を潜めているような気がする。
私の頭の中ではサッキから、昔見たジョ〜ズの映画の一番グロ怖いシ〜ンが、
走馬灯のように.....
が、しかし、どう考えてもココは海じゃないんだから存在しようがない。
自身に言い聞かせながら泳ぐ。

天井の綻びから、何処までも青い空が覗いている。
オ〜ロラのような光の幕が、薄暗い洞窟の中で踊っている。

暫く泳いだら泉からよじ登り、更に暗い穴の中へと突入する。
足音と天井からポタポタ落ちてくる水の音が
心地良い音楽となって洞窟の中に響き渡る。

行き止まりになったら、クライミングのセミプロであるフアンが神業で岩壁を登り、
辿り付いた上からロ〜プを垂らす。
岩肌がヌメヌメしていて登りにくい。
って言うか、登れない...。
結局上から引き上げて貰う。

そこから横穴に入り抱腹前進。どんどん狭くなる。
本当に道はあってるのだろうか...??
しかし心配は無用「ミリの訓練で何万回も経験済みのオレ抜きで行く気なのか?」
とか言ってドタ参してきた隊長だもんな。
安心、安心。

ゴツン。
いてっっ。
隊長の足にぶつかる。
彼は苦しい体勢で後ろを振り向き、
「なんか違うみたい」
.....。
もと来た道を皆でジリジリ抱腹後進。

気を取りなおして隣の穴へGO!
10m程の抱腹前進の後、何だか広々としたトコロに出る。
暫く歩くと直径2Mも無い位の穴が見えた。覗き込むと穴の下に新しい泉が佇んでる。
隊長が飛び込み、コトもナゲに言う。
「まっすぐ落ちないと、岩にぶつかって血の海だから」
......。
とりあえず一番でぶいアンヘルを先に飛び込ませ、安全を確かめてから飛び込む慎重派の私。

暫く泳いで、岩のア〜チを潜りクグッて3つ目の泉に突入する。
どんどん浅くなり、終いには腰の高さまでになる。
道を塞ぐ大きな岩をよじ登り、滑り降り、岩と岩の間をくぐり抜け、
腰を屈めて横穴を抜け出ると最後の泉に出た。
遠くに洞窟の出口が見える。

遠くでキラキラ揺れている光に向かって私達は泳いでいく。
まるで胎児がママのお腹から、外の世界へと導かれるように。

I WAS BORN !
洞窟を出た途端、光と音の洪水に襲われた。
大地が太陽に焼かれる音、遠くに聞こえる滝の音、木の葉の揺れる音、
複雑に絡みあう水の波うつ音、空気の流れる音、
風のささやき、鳥のざわめき。
全てが生きているコトを主張している。

まるで死の世界から帰還したかのようだった。


inserted by FC2 system